『 鳥になって ― (2) ― 』
かちゃん。
桜模様の湯呑みが 少しだけ揺れた。
フランソワ―ズは 意識して大きく息を吸った。
「 ・・・ そう なの?
ねえ こんな風には言いたくないけど ― ニホンジンだから? 」
碧い瞳が ひた ・・・ と 真正面から見つめた。
「 ・・・ ! 」
ドキン。 ジョーの心臓がハネあがる。
戦闘中 どんな窮地でも 敵将との一騎打ちの時でも
彼の心臓は いつも正常に平常にトクトク・・・打っているのだが。
意中の彼女の、直視に 009の心臓は想定外に跳びあがったのだった。
同世代のニホンジンに あんな視線を送ってくるコは いない。
こんな風に まっすぐきりりと見つめるオンナのコは いないのだ。
うわ ぁ ・・・
く・・・ む 胸が痛い・・・かも・・・
ひゃあ 綺麗だなあ 〜〜〜
うわ〜〜〜 うわ〜〜〜〜
彼は 痛む?胸を抱えて ひたすら彼女の顔を ぼ〜〜〜〜っと
眺めていたのである。
「 ( コクン ) ・・・ ごめんなさい
ちょっと言い過ぎたわ 」
彼女はお茶を一口飲んで いつもの口調になった。
「 ・・・ ぁ あ ううん あの べつに・・・ 」
ハート・ブロークン・ジョー は へどもどしている。
「 そりゃ 国民性とか ・・・ あるわよね ・・・
でも でもね! 」
カタン。 彼女は湯呑みを遠くに置いた。
「 でもね ! 音に合う 音と共に 音を踊る のがバレエよ? 」
「 ・・・ そこらへんはよくわかんないけど。
あのさ ニホンジンって そるえる って得意・・・というか。
チビの頃から やってるから慣れてるんだよ 」
「 え??? 小さい頃から コールド・バレエ やってるの?? 」
「 あ〜〜〜 そういう意味じゃなくてさ〜
幼稚園のお遊戯とかも 皆で一緒に揃えて〜〜 さんし って 」
「 ・・・ へ え ・・・・ ??
皆 おんなじことをするの?? そんな小さい頃から 」
「 まあ そんなモンかな 」
「 ・・・ それって。 イヤじゃないの??? 」
「 あ〜〜 別に イヤ ってほどでも ・・・ 」
「 !! 信じられない〜〜〜 」
「 ・・・ あの 前へ倣え がそんなにイヤなわけ? 」
「 だって 個人の自由でしょ? 」
「 あ〜〜 そんなに深く考えないっていうか・・・
集団で行動する時は その方が便利かな〜〜〜 って程度だけど 」
「 ! ああ そうなの ・・・ 」
フランソワーズは 少し拍子抜けした顔をした。
「 ・・・ ? ぼく なんかヘンなこと 言った? 」
「 あ ううん ・・・
ただ なんていうか ― 根本的に考え方が違うのかなあ〜 って 」
「 ??? 前へ倣え が?? 」
「 ― そのコトじゃなくて ね ・・・・ 」
「 よくわかんないけど。
とにかく 日本人ってそういう行動に慣れてるんだよ。
習慣になってるって感じ 」
「 そ う ・・・ ふ〜〜ん ・・・ 」
「 ごめん あんまし説明になってない ? 」
「 ・・・ わかったわ。
とりあえず 明日のリハは < そろえる > ことに集中してみる。 」
「 とにかく今日はさ ゆっくり寝ちゃえよ 足、痛いんだろ?
あ 博士の湿布をもらって さ 」
「 ― それがいいみたい ね ・・・
・・・ ジョー オイシイ晩御飯 ありがとう
本当に嬉しい! ジョーのシチュウ また食べたいわ 」
彼女は いつもの柔らかい笑顔をジョーに見せてくれた。
「 え そう?? ウレシイなあ〜〜
あ ・・ あの ふる〜ちぇ は ・・・? 」
「 あ! あれ 大好き〜〜〜♪ 一番好きなイチゴ味で
もう最高よ ねえ 夏になったら少し凍らせてみて? 」
「 あ そうだね〜〜 アイスみたくなって美味しいかも 」
「 ね! ・・・ ふぁあ〜〜〜〜 ・・・
あ ごめんなさい ・・・ 後片付け 」
「 ぼくがやるから。 ってか 後片付け までが晩御飯だろ?
きみは はやく休めよ ― その足 ・・・ 」
「 え あ うん ・・・ ありがと♪
わたし このお家に住んでよかったわ
・・・・
あの ・・・ うふふ ジョー あなたと一緒に ね 」
ふふふ ・・・ ちゃお♪
投げキスと淡い笑みを残し 彼女は部屋へ引き上げていった。
「 ・・・ う そ ・・・ うは〜〜〜 えへへへ・・・
ひゃ〜〜〜〜 あは なんか ぼく あったかいよ〜〜〜う 」
誰もいないキッチンで スツールに座ったまま ―
ジョーは ときめくわが胸を押さえ押さえ ・・・・ ほ〜〜〜んわかしていた。
えへ ・・・
なんか めっちゃ シアワセ かも♪
心も身体も ぽっかぽか〜 で足取りも軽く? 彼はキッチンを
ささっと片づける。
「 え〜〜と ガス台は拭いたし シンクもおっけ〜〜
皿は ・・・ あ こっちだよね 」
食器棚を開ければ ― 皿 小鉢が並ぶ。
皆 同じこと、するの???
ソレって いやじゃないの?
並んだお皿を見たら ふと ・・・ その言葉が浮かんだ。
碧い瞳は 真剣だった。
彼女は本当に心底 驚いたのだろう。
「 ・・・ そっか ・・・ そういう風に考えるのかあ
あ ・・・ そう言えば ・・・ 」
皿を仕舞う手が 止まった。
思い浮かべるのは ― 気が付いたら あの赤い服を着ていた頃。
自分自身に起きた未曾有の大事件を ま〜〜〜ったく把握できていなかった
・・・ あの頃。
激しい戦闘中は 無我夢中だったけれど。
気がつけば 移動 ・ 休息 そしてミーティング ・・・・
< 仲間 > たちと行動していた。 成り行き、というか 仕方なく。
・・・ な なんかよくわからないけど
と とにかく付いて行かなくちゃ・・!
こんなトコで迷子になったら ― ヤバすぎ★
「 ・・・・ ! 」
彼は息せき切って 仲間たちについてゆく。
「 ・・・ えっと。 ぼくは 9番目 って言ってたよな・・・
そっか 最後尾 ってことだよね じゃ 一番 後ろ・・・っと 」
9番目クンは 恐らく近い年頃とおぼしき黒人青年の後を 追った。
― 移動しつつ ふと 気になった。
「 ?? なんか 皆 めちゃめちゃじゃん?
ど〜して蛇行してんだ あの赤毛。 あれれれ・・・ 太っちょオッサン、
ぼくの前にきたよ? たしか・・・ 6番だよね??
え〜〜〜 なんで先頭を えっと〜〜〜 4番と
3番のあの彼女がゆくわけ??? ヘンじゃ〜〜ん ??
先生に怒られるぜ〜〜〜 順番 守らないと〜〜 」
集団行動 については チビの頃から叩きこまれていたせいか
典型・日本人の 009 は 盛大に ?? をまき散らしつつ
とにかく仲間たちの後を 9番目 の位置通り ― つまり
最後尾から 駆けて行った。
「 ・・・ ああ 来た来た お〜い ミーティングだ ! 」
「 〜〜〜〜〜 お 遅くなりました ・・・ 」
最後に岩陰に飛び込むと 同じ服を着た仲間たちが待ちかねていた。
「 おお ボーイ〜〜 どうした? 加速装置つきが ・・・ 」
つるっぱげの中年が にやり と笑う。
「 おめ〜 使い方 わかってるのかよ? 」
赤毛が くちゃくちゃガムを噛みつつ つっかかる。
「 ― さっさと座れ。 始めるぞ 」
正面から 銀髪に睨まれた。
「 あ ・・・ す すいません ・・・ 」
ジョーは 一番後ろの位置 を探したが ―
?? あれれれ ・・・・?
なんだ???
皆 てきと〜〜に座ってるよ???
円陣 組まないのかな
・・・ え あぐら??? いいのかよ〜
体育座り がふつ〜 だろ?
またまた 彼は ?? を盛大に飛ばしつつ
とにかく一番隅っこに ブーツの脚を抱えて体育座りをした。
銀髪の4番が前に立って なにかを発言している。
他の仲間たちは まあ 三々五々というかそれぞれ好き勝手な場所に
好き勝手な恰好で 座っていた。
・・・ なんのハナシなのかなあ〜〜
よくわからないけど。 まあ いっか・・・・
連絡事項は 最後かなあ
ジョーとしては 当然みんな 体育座り で円陣かと思っていた。
皆 同じ方向を向いて ハナシを聞く のだと決め込んでいた。
が。
「 あ〜〜 それは 僕が解析したよ。 データ送るよ 」
銀髪のハナシの途中で黒人青年が手をあげ ― 次の瞬間に
ジョーのアタマの中に なにか膨大な通信が流れ込んできた。
「 ・・・! う わ ・・・・? 」
「 ? なに? あ エラーあったかい 」
事も無げに黒人君が振り向いた。
「 ・・・ え えら〜〜?? ( 中身 わかんないよ〜〜 )
あ ごめ ・・・ いきなり だったから 」
「 ああ ー 君は初めてかあ・・・ ごめ〜〜ん。
あのさ 補助脳にとりあえず収納ってファイル作っておくと便利だよ 」
「 ・・・ 脳?? ふぁいる?? 」
ファイル といえば クリア・ファイルかコクヨのA4サイズ しか
思い浮かばない。
アタマの中に ・・・ アレ、つっこむの???
文字通りジョーは アタマを抱えてしまった。
「 ? なんだ? ― 続けるぞ 」
「 ダコ〜 あ ピュンマ 次回は圧縮してね 」
金髪美女は とんとん・・と自身のコメカミをつつく。
「 多量だと アタマがおも〜〜いの〜〜 ね?」
わはは あはははは ふふふ へへへへ
どうも彼女の発言はジョークだったらしく皆が同時に笑った。
ジョーには どこが笑えるのか ま〜〜〜〜ったくわからない。
??? え え ええ????
な なにがオカシイわけ???
・・・ と とにかく 笑わなくちゃ
「 〜〜〜〜〜 」
ジョーは隅っこで 微妙〜〜な笑いを浮かべ縮こまっていた。
・・・ そう あの当時、一事が万事、そんな感じだったのだ。
「 ・・・ な〜んかさ あの頃って。
めっちゃ孤独だったよなあ ・・・ 全然ついて行けないってか。」
ふう ・・・・ ちょっぴり苦いため息だ。
「 さ ・・・ ここ片して ぼくも寝ようっと。
あ〜 なんかもう一回 オフロ、入ってくっかなあ〜〜 」
トン。 皿をきっちり仕舞い 食器棚のガラス戸を閉め。
ガス栓を確認、キッチン中を振り返り うんうん・・・と頷く。
並べて干した布巾は 明日の朝、洗濯機に入れればいい。
「 おっけ〜〜。 ああ 今日もいい日でした。 」
ぽんぽん。
なんとな〜く柏手を打ってジョーはキッチンを後にした。
現在 島村ジョー君はとても ( 心身ともに ) 居心地のよい空間で
暮らしているのだ。
― 闘いはまっぴらゴメンだ。 それは仲間達、全員の思い。
そして ジョーはさらに思う・・
やっぱさ〜 なんかようわからんワケさ
・・・ そのぉ ふぃ〜りんぐ っての??
そりゃ み〜んないいヤツだってことは
ちゃ〜〜んとわかってるけど ね。
「 うん 平和がイチバン! さ。
あ〜〜 明日も晴れるといいな〜〜 美味しいご飯がたべられますように〜 」
正義の味方?? は にこにこ顔で眠りに落ちるのでした。
― さて。 我らがフランソワ―ズ嬢は というと。
翌朝 ・・・ 都心に近いバレエ団の更衣室で。
「 ― とにかく。 今は他のコトは考えない・・・ことにするわ。
< そろえる > のみ。 ・・・ え〜と・・・
まえ〜〜 ならえ よね 」
金髪サンは着替えつつ なにやらぶつぶつ・・・言っている。
ばったん ・・・ !
「 おはよ〜〜〜 フランソワ―ズゥ〜〜〜〜 」
「 あ おはよう みちよ ・・・ あら どしたの? 目・・・ 」
「 ・・・ あ〜 やっぱヘン? 」
珍しくぎりぎりに入ってきた丸顔の彼女は その大きな瞳をくるり と
回した ・・・ はれぼったい瞼が じゃまそうだ。
「 うん ・・・ 腫れてない? 目薬、あるわよ? 」
「 あ う〜〜うん いいの いいの
なんかさ〜〜 珍しく 眠れなくて さ ・・・
これ ただの寝不足よぉ 」
みちよサンは 手早く髪を結いあげつつぼやく。
「 え・・・ あの 昨日のリハ のことで ・・・? 」
「 うん まあ そう。
アタシってお気楽O型でさ あんまし拘らないヒトなんだけど。
なんかね〜〜〜 割り切れなくて さ 」
「 よかった! 」
フランソワーズは きゅっとみちよの肩を抱いた。
「 え?? 」
「 アタシも なの! 昨日ね〜 ウチ帰ってから・・・・
関係ないのにね なんか ・・・・ ジョーに当たっちゃった 」
「 あは ジョーくん なんか言った? 」
「 ごめん って。 なにも彼が謝るコトじゃないのに ね。
そんな彼の顔 みてたら ・・・ なんか自分がちっさいな〜〜って 」
「 ちっさい? ・・・・ ああ 度量が狭いってこと? 」
「 あ そういうの? よくジョーが あ〜 ぼく ちっさ〜って
残念そう〜に言うの。
つまりさ そんな些細なコトに拘って ― ちっさ って思ったのよ 」
「 ! わかる〜〜〜〜 」
「 ね? それでね ゴハン食べて オフロに入って ― 決めたわ 」
「 ・・・・ 」
「 いろいろあるけど ― 今は 横に置いとく。
それで < そろえる > ことに集中します 」
「 あは! だ〜から アタシ フランソワーズが好き〜〜〜 」
「 きゃはは♪ わたしもみちよが好きよぉ〜 」
二人は 抱き合ってウサギの仔みたいにぴんぴん 跳ねた。
♪♪♪〜〜〜 ピアノの音階が聞こえた
「 ! やば〜〜〜〜 ピアニストさん 来ちゃったよぉ 」
「 きゃ〜〜〜 髪 髪〜〜〜 ああ タオル〜〜〜 」
わ〜〜〜〜 バタバタバタ ・・・・
「 ほうら。 始めますよ お嬢さんたち? 」
マダムの笑い声が聞こえ ― バタン。 稽古場のドアが閉まった。
― 数時間の後
カタカタカタ カンカンカン ・・・
口は閉じていても 26人のポアントの音とヒトが動く気配で
スタジオは賑やかだ。
「 はい〜〜〜 それじゃ アタマから。
昨日のリハでの注意を よ〜〜く思い出して。 はい ! 」
ミストレスの先輩の声で さ・・・っと緊張感が走る。
♪♪ ♪ 〜〜〜〜 ♪♪ ♪ 〜〜〜〜
お馴染みのメロデイと共に 白鳥たち が一人づつ下手から登場してきた。
「 ・・・ ふ うん ・・・? 」
鏡の前で椅子に座っていたマダムは ちょっと微笑んだ。
カタカタカタ −−−−。 全員が <舞台> に乗った。
♪〜〜〜〜〜 ♪♪♪ ♪ 〜〜〜〜〜
26羽の白鳥たちが 一斉に羽ばたき踊り始める。
「 ・・・ センター、 守って。 ここ よ 」
ミストレスは とん、と 鏡の前、中央に立って合図をする。
「 列〜〜〜 ほら 少し曲がってるよ ・・・・
うん うん ・・・ そう 直ったね うん 」
♪ 〜〜〜〜 プツン、と音が止まる。
「 はい〜〜 ここまで ね〜 水分、補給しつつ聞いて。
マダム ? 」
「 ― はい 皆 御疲れ様。 昨日のこと、よ〜〜くアタマに
入ったみたいね。 ありがとう。 」
ざわ ・・・・ 少しだけ雰囲気が和らいだ。
「 一応 前後左右を注意して踊れた ・・・・ ようね。
全体の動きとしては ・・・ まとまってきた と思うわ。 」
コツ。 マダムは立ち上がりダンサー達の前に立った。
「 入門編 は終了。 お疲れさま。
では ― ここからコールドのリハを始めます。 」
ザワザワザワ ・・・・
新人たちは少し怪訝な顔をし 先輩たちは あ〜〜〜 やれやれ・・・
と複雑な表情をみせていた。
「 − 始めますよ 」
・・・ さて その後。 白鳥たち は 延々 あのステテコのシーンを
繰り返すこととなった。
8小節ごとに音を止めて 仔細なダメ出しが始まった。
「 音 音 きいて! あってない! そこ! 二列目 はやい 」
「 膝! クラシック・チュチュで丸見えなのよ
お膝を曲げてはダメ って チビさん達に言っているでしょう? 」
「 ジャンプですよ? 地上にいるのじゃないわ。
ソッテ!!! ソッテ !!! ソッテ〜〜〜 ! 」
「 アラベスクの脚の角度。 アナタのアラベスク じゃなくて。
皆 正確に 90度 ! 」
ん 〜〜〜〜〜 カツカツカツ タタタタターーーー
うめき声に近い吐息が ポアントの靴音の間に混じる。
やり直し やり直し やり直し を繰り返し ― ようやっと
このシーンの最後まで通すことができた。
「 ・・・ん〜〜 悪くない わ。
いい? 白鳥さん達。 今の感覚をしっかり覚えて。 」
こく こく こく。 26対の瞳が頷く。
「 え〜と? ああ ちょっと時間超過したかな〜〜
はい ここまで。 お疲れさま〜〜〜 」
ありがとうございました
リハ―サルが始まってから 初めて全員の掠れたみたいな声が響いた。
「 御疲れ様でした ありがとうございました 」
ミストレスを務める先輩ダンサーが 芸術監督でもあるマダムを労う。
「 初白鳥さん達 ・・・ びっくりしてましたね。 」
「 ふふん ・・・ 最初はね ともかくひよこちゃんズに
< 揃える > ってこと、覚えてもらいたいわけ よ 」
「 ああ それで昨日は 」
「 そう。 テクニック的に正しく踊るのは当然。
でもね 群舞では揃えるのが大前提でしょ。
特に 『 白鳥〜 』 ではね 」
「 そうですねえ ・・・ まあ あまり大勢の群舞って
皆 経験がないでしょうし 」
「 ふふふ チビちゃんの頃の < おゆうぎ > くらいかしら? 」
「 あの頃は < たのしく > が一番ですからね 」
「 まあ 皆 ばっちり勉強して欲しいわ。
特に 初白鳥達にはね〜 期待しちゃうのよ 私 」
クスクス ・・・ 笑い声をたて マダムは上機嫌でスタジオを出た。
更衣室では ―
「 〜〜〜 うわあ やっぱ 足の指 剥けてるぅ〜〜〜 」
「 アタシ 爪 半分・・・ いった〜〜〜 」
隅っこで 金髪と黒髪が悲鳴をあげる。
「 そんなに難しいテクはないのにねえ 」
「 そうだよねえ 立って 歩いて まあ ちょっと脚上げて? 」
「 ねえ ・・・ 」
ふう〜〜〜 二人は自分の足をみつめてため息・吐息。
「 あらあ〜 派手に剥けたね〜〜 」
先輩で 二羽の白鳥 ( 大きな白鳥の踊り ) を踊る先輩が
ちらっと視線を投げてくれた。
「 あ よ〜こ先輩〜〜 えへへ 剥け剥け ・・・ 」
「 そうねえ かなり長時間だものね。
あのね コールドのリハの時はう〜〜んと柔らかいポアント、
履いておいたほうがいいわ。
本場までにだんだん硬いのに変えてゆけばいいのよ 」
「 あ ・・・ そうですよねえ 」
「 今はね〜 まだ場所取り と 合わせ が目的だから。
ほら ワタシなんて くったくたの 履いてるのよ 」
ほら ・・・ と 先輩はかなり草臥れたポアントを見せた。
「 わ・・・ 」
「 もうねえ 先が少し生きてるだけ。 ちょこっと立つには十分よ。
タイミングがしっかり頭に入ったら 靴を変えるの。 」
「 ・・・ はあ なるほど〜〜 」
「 そっかあ 〜〜〜 あ ありがとうございます 」
「 ふふふ み〜〜んな 教わってきたのよぉ、先輩から。
みちよもフランソワーズも ウチの白鳥 をしっかり覚えてね 」
「「 はあい 」」
いろいろあるけど。 やっぱり同じスタジオで汗を流す先輩は
ありがたい存在なのだ。
「 ・・・ がんばろ 」
「 ん ・・・ 」
「 わたし < そろえる > ってこと、覚えるわ 」
「 アタシもさあ〜〜 ホントいえば苦手なんだよねえ・・・
でも さ コールド できなきゃ ソリストにはなれないし? 」
「 ん。 コールド いないとグランド・バレエは成立しないし 」
「「 ・・・ がんばろ ・・・ 」」
新人二人はよれよれになりつつ でっかいバッグをずりずり引きずりそうになり
スタジオを後にした。
カタタン −−−− カタタン −−−
電車の単調は揺れは 本当に睡魔を誘う。
「 ・・・ ! ううう 寝ちゃだめ〜〜〜 降りすごしたら〜 大変
う〜〜〜 寝るな〜〜 フランソワーズ 〜〜〜 」
フランソワーズは 必死で掌に爪を立てたり髪を引っ張ったりしている。
「 う〜〜〜〜 あ 今晩のメニュウ 考えよ ・・・
昨日はシチュウ よね〜〜 美味しかったなあ〜〜〜
今日はぁ〜〜〜 やっぱ一緒くたに調理できるものがいいなあ〜〜
・・・ あ ウチのママン流の ブイヤベース にしよ!
冷凍シーフード があるし ・・・ き〜〜め。 」
お手軽だけど美味しい、あの味を思い出し、彼女はに〜〜んまりした。
全部順番に鍋に並べて煮込めばいいんですもの。
そうそう この前買った冷凍エビもいれちゃえ
トマトのホール缶もあるし♪
一緒くたにすれば 便利でオイシイのよ♪
フランソワーズは に〜〜〜〜っこり。 荷物を持ち直す。
タタタン −−−−− 電車は少しづつスピードを落とし始めた。
Last updated : 01.17.2023.
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************* 途中ですが
短いです 〜〜〜 すみません <m(__)m>
コールド・バレエ って ほんと、大変なんだよぉ
まだ 続く ・・・ はず ・・・・